江戸の釣り―水辺に開いた趣味文化 (平凡社新書)



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江戸の釣り―水辺に開いた趣味文化 (平凡社新書)
江戸の釣り―水辺に開いた趣味文化 (平凡社新書)

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「?」の多い本

この文献に、こういう記述がある――という点では面白く読んだ。しかし列挙されている資料について、筆者が下した意味づけには「?」と感じることが多かった。
例えば五代将軍綱吉の「生類憐みの令」によって、中野に十万匹の犬が飼育されたと、筆者は書いている。それはその頃、犬の餌となるイワシがたくさん獲れたから可能だったとも、筆者は書いている。しかしイワシを犬の餌とすることが、生類憐れみの令となぜ矛盾しないのか、一切言及していない。
あるいは筆者は、かつて東京湾に生息していた「もうを」という魚の正体を「謎」としつつ、だしぬけに「もうをの正体は長らく不明だったが、ようやくその実体が見えてきた」と述べている。何の証拠も挙げぬままに。
筆者はまた、「もうをは昭和30年代まで東京湾に生息していたモヨという魚だったのだ」と断定し、さらにモヨとは「品川や深川沖の泥地に生息していて、ハゼやカレイに混じって釣れた」魚だとしている。品川?深川という、きわめて狭いエリアにだけ存在する魚がもし存在するのだとすれば、相応の論拠を述べても当然だと私は思うが、何ら言及はない。
巻末の「参考文献一覧」に、筆者は複数の自著を挙げている。
参考文献に、自分の著作? そう思う私はひねくれ者なのだろうか。
単線的歴史観

 釣りが趣味文化として確立したのは江戸期であった。本書はその江戸期に著された釣り指南書・釣行記を年代順に紹介している。津軽釆女の『何羨録』や玄嶺老人『漁人みちしるべ』の記述が詳細に分析され、当時の釣りの実態が明らかにされていく。

 旗本の釣りから綱吉の生類憐れみの令による中断、庶民への拡大など、時代状況を踏まえつつ展開していく語り口には説得力があるが、資料を多用している割りには生き生きとした釣りの面白さが伝わってこない。詳細な事例同士が緊密な一体感に欠けているためだと思う。「釣り」という本質的な部分、楽しみが見えてこないのである。

 江戸期の釣りの技術や特徴を知りたい人(どういう人がそんなことを知りたがるのかはわからないが)にはお薦めだろう。



平凡社
釣魚をめぐる博物誌
『何羨録』を読む―日本最古の釣り専門書 (つり人ノベルズ)
闇の釣人 本所深川七不思議異聞







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