物理学者、ウォール街を往く。―クオンツへの転進



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物理学者、ウォール街を往く。―クオンツへの転進
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緩慢に夢が破れていく過程。

この本は読む人が金融関係か、物理学関係かで全然思いいれも見方も違うのだろう。著者は金融関係では有名人だが、物理学界では全然無名であった(本書をよむと実際はそうでもないようだが)ということもある。物理関係者は、前半の大学院での生活や不安を抱えたポスドク時代に、共感するかもしれない。有名な物理学者がたくさん出てくるのも興味深いかもしれない。また、アカデミックポストを諦めベル研に就職する箇所には、著者が感じたような後ろめたさを思い出すかもしれない。
 金融関係の方は、前半部分はなんでこんなにいらんことを長々と書いているのか?と思うだろう。

私の感想では著者にとっては、きっと、物理学者にあこがれ、第2のアインシュタインになることを夢見、それが第2のファインマン、第2のリー(この本この訳は終始一貫しておかしい)、次のポスドク
という風に、現実にぶつかり、ゆるやかに夢が破れている過程を書きたかったのではないか?と思えて成らない。もちろん、それも案外悪いものでもなかったという感慨をもって。そう思えてならない。
翻訳がいいかげんなのが残念

南アからニューヨークにやってきた著者は多くの秀才が集まるコロンビア大の大学院で最先端の理論物理を学ぶ。十分に秀才でありながらも天才ではない著者は、物理の研究でも経済の世界でも様々な驚きととまどいを経験しつつ苦闘しながらも最後に成功を収める過程が等身大で語られている。そのエピソードのそれぞれが実に面白い。また、物理と経済の両方において著者が取り組んだ問題が平易にまとめられているのも魅力。ただし基礎的な誤訳が目立つのがとても残念。せめて物理の専門家に校正をお願いし、地名くらいは調べてから翻訳・出版して欲しい。
研究者の人生

元理論物理学者であった著者が,ウォール街のクオンツとして成功するまでの波乱万丈の物語.デリバティブはロケットサイエンティストが作っているという話があるが,著者は「ロケットサイエンティストが最先端の科学者だと勘違いして」というほどの本格的な科学者である.そのような優秀な科学者であっても,理論物理学の世界で成功するのは難しく,AT&T ベル研究所を経て,クオンツへと転向していくくだりは,多くの日本の研究者にも身につまされる悲哀を感じさせる.

著者の物理学や金融工学の解説はとても適切でわかり易い.物理学会やベル研(日本で言えば,NTT研究所か)の雰囲気も実に良く描かれていて,優れた科学者はまた優れた解説者だということを実感させられる.そして,著者の科学に対する敬虔な姿勢が,金融工学の世界での成功をもたらしたことは,いかなる分野であっても真実を追い求めることの価値が不変であることを実証していて,救われた思いがする.

金融工学と自然科学の相違は,前者が人間の営みを解き明かそうとするのに対して,後者は神の企みを解き明かす,したがって,金融工学は人間行動のシミュレーションに過ぎず物理学のような絶対的な真理は存在しない,という著者の評価はいかにもユダヤ教的であるが,説得力がある.これから研究者やクオンツを目指そうとする人には特におすすめであるが,そうでない人にも,この知的刺激を味わってほしい.
物理学、通信会社研究所、ウオールストリート、そして学者へ

著者の人生はその時代背景を反映している。素粒子物理学の創世記に物理学を学び、その後学究者としての職を得ようとするが若き英才達により主要な大学の助教授等の定職への道は閉ざされ、まだ全盛を極めていたAT&Tのベル研の研究職の地位を得る。だがそこは彼にとってはお金のために働く場でしかなかった。 
 金利の高騰による債権の暴落、90年代後半の株価のクラッシュにより生じたDerivativeの発生はウオールストリートにクウオンツという職業を生み、著者は他の数学者、物理学者出身のPhDとともに、その創世記をGoldmanでモデルの構築とシステム化で過ごすことになる。ファイナンスの教科書で目にする著名な登場人物とのやりとりが頻繁に現れるが、著者はそれを誇る訳ではなく、むしろいつも学会を離れた後ろめたさと満たされない欲求を持ち続けている。
 本書は、物理学、ファイナンスの近代史に触れることができるのみならず、そのような著者の人生感を垣間見ることのできる読み物だと思う。


His Life as a Quant

「クオンツ」の仕事内容についてはあまり知られていない。未だに、クオンツ=ロケットサイエンティストと片付けられてしまうことも多い。
本書は、まさしく第一級のクオンツであったダーマンが、その実際の仕事内容について、おそらくは初めて具体的に描写した点で意義深い。
また、「金融モデルはどうあるべきか」、「クオンツはどうあるべきか」という命題に対する筆者の信念ともいえる見解も興味深い。

個人的には、ダーマンの成功が決して順風満帆なものでなかったことに一番驚かされた。困難な状況下で理論物理学者を継続していくことへの不安、中途で挫折し未練を残しながらもウォール街へ足を踏み入れる際の敗北感、拝金主義が蔓延する投資銀行でのクオンツとして働く悲哀等々が淡々と描かれている。そのような中でも過度に悲観的になることなく、実直に忍耐強く取り組んでいった筆者の姿勢には勇気付けられる思いがした。



東洋経済新報社
金融工学者フィッシャー・ブラック
金融工学20年〜20世紀エンジニアの冒険
金融工学辞典
統計学を拓いた異才たち―経験則から科学へ進展した一世紀
物語(エピソード)で読み解くデリバティブ入門







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